『親衛隊士の日』ウラジーミル・ソローキンを読んで

 『親衛隊士の日』ウラジーミル・ソローキンを読んで

 舞台は、ヨーロッパとの間に巨大な壁が築かれ、中国が技術大国として台頭した近未来のロシア。

 

 主人公のコミャーガは、当初、体制に忠実なだけの人物として描かれている。

 しかし、物語が進むにつれて彼の内面が徐々に見え隠れする。ロシアの未来を憂い、伯爵への合図を見落とし、皇后へ欲情し、いずれは隊長の地位に就きたいと野心を抱く。彼の本当の欲望が垣間見えたとき、私たちは彼が自分たちと何も変わらない人間であることに気づかされる。

 彼は、私たちの周りにもごく普通にいる人物なのだ。そして、彼に惹きつけられれば惹きつけられるほど、作中に登場する人物たちの欲望のすべてが、実は自分自身にも潜在的に存在するのではないかと、錯覚、あるいは確信めいたものを感じるのである。

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