ゆきてかえらぬ 映画

  Wikipediaにも載っている、有名な三角関係です。この中では中原中也が一番有名です。夭折の天才詩人、中学生くらいで読んだことがある人は多いと思います。

 それに比べて、小林秀雄は現在では、知名度が低いようです。ですが、日本の批評や言論、思想に多大な影響を与えた人物です。小林秀雄も天才です。

 小林秀雄は、天才で色々なことに才能があり、のちに知の巨人と言われる人ですが、若い頃の小林秀雄は中原中也のような詩の才能が欲しかったのでしょう。

 小林秀雄は小説や詩の才能はなかった。ランボーを翻訳するほど、詩を好きだったのに才能はなかった。(文章に詩的な表現を持つが、それは表現であり詩ではないのです)

 だからこそ、三角関係が生まれるのです。

この前提条件を、映画では描いていません。そのため、なぜ小林秀雄は、泰子を通して中也に触れたいと思っているのかが、本当の意味では理解できないのです。

 前提条件ありきの映画ではあるのですが、製作者は知識がなくても楽しめるように苦心をしています。それは、主題を小林秀雄と中也の奇妙だが、生涯続く友情でもなく、三人の三角関係でもなく、泰子の生き様に置いた点です。まあ、ジェンダーフリーを意識して、泰子を描いている気もしなくはないですが、小林秀雄か中也どちらかを主人公にするより、知識がなくても見れるでしょう。

 ストーリーだけでなく、街の風景、服装、さりげない会話が大正から昭和初期(戦前)という日本の古き良き時代をみせてくれることが素晴らしいです。

 天候も効果的にみせてくれます。何度かある雨のシーンはどれも心に残ります。美しい自然の風景も同じですね、ボートを漕ぐ湖、満開の桜のシーンどれも心に残ります。

 街中も建物の中もどれも素敵です。京都から東京に舞台は変わり、その最初のチンチン電車に泰子のシーンや、小林秀雄と泰子が一緒に行ったカフェも素敵です。小林秀雄の家も、洋と和が重なった、大正から昭和前期らしい家です。

 遊園地やダンスホームも大正モダンに溢れていて、見てるだけでドキドキします。

 この映画は色々な知識があればあるだけ、楽しめると思います。

 中也が別れてから毎日のように小林秀雄の家に行くというのも、史実なのかどうかはわからなかったが、映画の中での泰子が病む原因の一つであるが、史実では中也との同棲中にすでに潔癖症は出ていたようだ。

 映画なので、実際の話しとは違う点もあります、ですがラストは何かしら人を強さを思わせてくれる終わり方でした。

 ちなみに、小林秀雄が自信満々に懸賞評論で一位を取ると言ってますが、実際は二位でした。

 大正から昭和前期という戦前の、短い平和な時代、もしこの時代が長く続き戦争がなければ、どんな日本になっていたんだろうと空想してしまう、素敵な映画です。







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